学者たちを駁して

人文書中心の読書感想文

フルーツに日本酒を。/千葉麻里恵・宇都宮仁『最先端の日本酒ペアリング』

日本で唯一のアシッドジャズが流れる日本酒バーで、メロンの真ん中をくり抜き水府自慢を注いで食べたことがある*1。これが意外と美味だった。確かその時流れていたのはYoung DisciplesのGet Yourself Together Pt1 & Pt2だったと思う。Talkin' Loudレーベル1991年の名盤の冒頭を飾る一曲だ。けれども、その組み合わせをどうして美味しく感じるのか、その理由はよくわからないでいた。そんな不可解な経験をもっと突っ込んで考える気にさせてくれたのがこの本だ。

 

最先端の日本酒ペアリング

最先端の日本酒ペアリング

 

 

仙禽に桃を合わせたり、花陽浴をメロンの代用として使ったりと、フルーツに日本酒を合わせるレシピがごく当たり前のように載っている。長野県の笑亀酒造みたいに最近はクエン酸やリンゴ酸のようなフルーティな酸にこだわる蔵が増えたので、フルーツの酸に日本酒の酸を合わせるようなことも手軽にできるようになっているらしい。甘酸っぱい味わいには甘酸っぱいお酒を、という風に、食材と似た味や香りのお酒を用いることで「ピタリと合う」のだと本書は言う。その理由は、似たもの同士を合わせているからだ。

 

他にも、讃岐くらうでぃとラムカレーをかけ合わせてラッシーの味わいを再構築したり、卵サンドと花巴山廃仕込みで焼き立てのフレンチトーストを口内組成したりと、何だかいい意味でクレイジーなことをやっている。本書でフューチャーされている恵比寿のGEM by motoにも機会があれば立ち寄ってみたいと思った。

 

この本もそうだが、どうも最近は自分のからだを実験台に使って感覚を解き放とう、もっと五感を研ぎ澄ませて生活を楽しもう系の本ばかり読んでる気がする。タナカカツキさんの『サ道』とか青井硝子さんの『雑草で酔う』みたいな。単に疲れているだけなのか、ずいぶん前に熱心に読んでいた井筒俊彦の神秘哲学の本が今更のように効いてきているのか…。その辺のことについては、稿を改めて考えてみよう。

 

参考

マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~(1) (モーニング KC)

マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~(1) (モーニング KC)

 
雑草で酔う~人よりストレスたまりがちな僕が研究した究極のストレス解消法~
 

*1:

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