2019年を振り返る(読書)
総括
2019年の前半は哲学書を、9月の中国旅行(成都→西安)を挟んでその前後は三国志遺跡本を中心に三国志関連書籍を読んでいた。仕事で気を揉むことが多かった後半は読書をする余裕がなく、通読した冊数は去年より大幅に少なくなってしまった。途中で投げた本も数多い。そんな中、去年一年を振り返って感銘を受けた3冊をあえて選ぶとすれば↓
⑴中川正道・張勇『涙を流し口から火をふく、四川料理の旅』
もともとは四川省で食べ歩くために買った本だが、新大久保や高田馬場や池袋北口にある“現地系”の中華料理店を開拓する際の手引きとしても使えるので重宝してる。本書を読む限り、四川料理は辛さだけでも6種類の辛さ*1を識別し、料理ごとに使い分けているらしく、たいへん奥が深い。ぐるなびではなく、本書や大众点评を片手に東京を歩いていると、ゆっくりと中国化していくもう一つの東京の姿が見えてくる。⑵渡邉義浩『人事の三国志』
三国時代の人脈形成のメカニズムをピエール・ブルデューの概念を用いて説明しようと試みた労作。諸葛亮孔明が徐州に所有する自分の土地を離れて、荊州の地で儒教的教養を基盤に"臥龍"の「名声」を確立していく様子が「文化資本」の概念を用いて描かれている。乱世においては、跋扈する賊からの攻撃に対して維持することが難しく持ち運びにも難がある大土地所有(=経済資本)よりも、身につけた文化を基盤にした名声(=文化資本)の方が、維持も持ち運びも簡単だったからである。渡邉先生の本にハズレなし!⑶木澤佐登志『ニックランドと新反動主義』
内容については既に紹介済み。リズムの良い文体が読んでて心地よく、雑誌やネットで著者の文章を目にするとつい読んでしまう。連載中のエッセイ『失われた未来を求めて』も面白いです。2019年に読んだ本(全22冊)
著者 | タイトル | レート |
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ハイデガー | ハイデッガー選集第7 哲学とは何か | ★★★☆☆ |
市田良彦 | ルイ・アルチュセール - 行方不明者の哲学 | ★★★☆☆ |
神崎繁 | フーコー | ★★★★☆ |
神崎繁 | 魂(アニマ)への態度 | ★★★☆☆ |
神崎繁 | ニーチェ | ★★★★☆ |
小林昭文 | アクティブラーニング入門2 | ★★★☆☆ |
木澤佐登志 | ニックランドと新反動主義 | ★★★★☆ |
佐藤俊樹 | 社会科学と因果分析:ウェーバーの方法論から知の現在へ | ★★★☆☆ |
渡邉義浩 | 三国志 運命の十二大決戦 | ★★★☆☆ |
渡部昇一 | ドイツ参謀本部 | ★★★☆☆ |
陳寿 | 正史三国志5 蜀書 | ★★★★☆ |
中川正道・張勇 | 涙を流し口から火をふく、四川料理の旅 | ★★★★☆ |
渡邉義浩・田中靖彦 | 世界歴史の旅 三国志の舞台 | ★★★☆☆ |
渡邉義浩 | 人事の三国志 | ★★★★☆ |
渡辺精一 | 知れば知るほど面白い「その後」の三国志 | ★★★☆☆ |
さくら剛 | 三国志男 | ★★★☆☆ |
高野秀行+清水克行 | 世界の辺境とハードボイルド室町時代 | ★★★☆☆ |
青井硝子 | 雑草で酔う | ★★★★☆ |
清水麻里絵・宇都宮仁 | 最先端の日本酒ペアリング | ★★★☆☆ |
ピエール・ブルデュー | ハイデガーの政治的存在論 | ★★★☆☆ |
映画秘宝編集部 | 新世紀ミュージカル映画進化論 | ★★☆☆☆ |
安田峰俊 | さいはての中国 | ★★★☆☆ |
2019年に読んだマンガ(全26作品)
著者 | タイトル | 進捗 |
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とよたろう | ドラゴンボール超 | 9/11巻 |
田畠裕基 | ブラッククローバー | 20/23巻 |
西森博之 | 今日から俺は!! | 全38巻 |
石塚真一 | BLUE GIANT SUPREME | 8/9巻 |
山本崇一朗 | からかい上手の高木さん | 11/12巻 |
沙村広明 | 波よ聞いてくれ | 6/7巻 |
芥見下々 | 呪術廻戦 | 7/7巻 |
押切蓮介 | ハイスコアガール | 全10巻 |
縞野やえ | 服を着るならこんなふうに | 1/9巻 |
高橋のぼる | 劉邦 | 5/6巻 |
山本崇一朗 | それでも歩は寄せてくる | 1/2巻 |
おかざき真里 | 阿吽 | 9/10巻 |
近藤笑真 | あーとかうーしか言えない | 2/2巻 |
智弘カイ・カズタカ | デスラバ | 1/6巻 |
岩明均 | ヒストリエ | 11/11巻 |
遠藤達哉 | SPY×FAMILY | 1/2巻 |
藤本タツキ | チェンソーマン | 4/4巻 |
河添太一 | 不徳のギルド | 4/巻 |
藤本タツキ | ファイアパンチ | 全8巻 |
ゆうきまさみ | 新九郎、奔る! | 2/巻 |
岩明均 | 寄生獣 | 全10巻 |
宇佐崎しろ | アクタージュ | 8/9巻 |
宮下英樹 | センゴク一統記 | 全15巻 |
ゆでたまご | キン肉マン | 68/69巻 |
宮下英樹 | センゴク権兵衛 | 17/17巻 |
所十三 | 疾風伝説 特攻の拓 | 全27巻 |
マンガは『チェンソーマン 』『アクタージュ』『あーとかうーしか言えない』を貪るように読んだ。『ハイスコアガール』が最終回を迎えて寂しい。
その他、仕事で出版が決まって原稿書いたり、同人誌に寄稿したり、香港民主化デモのとき近くにちょうど居合わせたり、孔明の北伐のルートを辿り直したり、台風19号が成田に直撃したせいで出張先のハワイで帰宅難民と化したりと、何かと落ち着かない動きの多い一年だった。